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レザージャケット&レザーチェアの修復

レザージャケット&レザーチェアの修復

2018/02/18

先日、アップした2017年にてがけたものづくりフラッシュバックでも、幾つかの修復の案件を紹介しましたが、今回は、レザーの品に関する修復の様子をご紹介します。

レザークラフトは、専門とはしていませんが、木と同じく、お手入れ次第で、味わい深く、表情を変える素材として、個人的に好きです。
10年ほど前から、時間があるときに、少しずつ練習を重ね、最近では革を使った家具の一部は、修復などのご依頼もお断りせずに、扱えるようになってきました。
今回、馴染みのお客様と、地元横浜市青葉区の友人からの依頼でレザー製品の修復が続けて入りましたので、同時進行で、作業をいたしましたので、そのレポートをご紹介します。

使い込まれたレザーチェアの座面を貼り替える

こちらは、2016年に手掛けたオットマンのレザー表地の交換動画

底板もクッション材もあるオットマンとは異なり、今回、ご相談いただいたのは、

7−8年前に、お求めいただいたインド製のアイアンとレザーだけのシンプルなチェア。

素敵なデザインの一点もののイスで、座面も背もたれも、クッションは無く、革のテンションだけで成り立つというものです。
しかし、スプリングもクッションも、下地もない座面ともなると、荷重もかかりますので、丈夫で程よい厚みのある革、そしてきちんとした縫製が必要になり、
調達と納得行く仕上がりのための勉強にお時間をちょうだいすることをお許しいただいた上で、仕上げさせていただきました。

レザーチェアの修復

革は、浅草橋の問屋さんに赴き、丈夫なヌメ革を入手。これを起こした型紙どおりに裁断して、
一旦水浸しに。革は濡れると延び、乾くと締まる(縮む)という性質を利用して、濡れた状態で、アイアンのフレームに固定。
クランプを総動員して、癖付けをした上で、革紐で、縫い上げています。

ただし、背もたれの革はまだ使える状態でしたので、残したのですが、新調した革とは雰囲気が異なります。
そこで、アイアンの鉄とタンニンなめしの革の反応による黒褐色のシミなどを再現し、
オイルを染み込ませ、陽に当てという作業を繰り返してエージングをし、可能な限り、オリジナルの状態に
近い仕上げにしています。

革の担任と鉄の反応が出たあとは、ラッカーでコーティング

あとは、時間とお手入れで、少しずつ飴色に変わっていくのをじっくり待ちながら
お使いいただくことになります。

続いては、

30年の時を経たムートンジャケットが復活

こちらは、横浜市青葉区あざみ野の横浜【漢方】サント薬局の山浦さんからのご依頼。

なんでも高校生の時に、欲しくてほしくて、ご両親に割賦をして手に入れたムートンのB3ジャケット(高高度で飛ぶ戦闘機などのパイロットのためのジャケット)。

青春時代を一緒に過ごしたであろうジャケットも、最近は何年もクローゼットの中でひっそりと眠っていたそうです。

しかし、昨年、出してみたところ、吊っていたハンガーが、肩の部分から突き抜け、無残な姿に。

毛の付いた状態のシープスキンをひっくり返しているムートンは、堅牢な牛革に比べればデリケートですし、

オイルで磨き込むなんていうのも向かない素材。

忘れられてしまった長い年月の間に、すっかり潤いを失い、もろくなってしまったようです。

真っ黒だったという表面も、30年の間に、もとの羊さんの色というか、砂漠のような色合いに。

再び、黒く染める そして 縫う。

染料は、革用の染料を入手。それを3度塗りで黒く染めました。そのままですと、色移りがしますので、色止めをこれまた何層にも塗り重ね、通常使用では、問題のないレベルにまで、保護をしました。(なんでも革を完璧に色落ちしないようにはできないらしいですね。)

ファスナー脇などの黒いテープ状の部分は、牛レザーで、スレやアタリはあるものの、破綻はしておらず、30年の歴史ということで、そのままに。
肩の抜けてしまったところは、ナイロンのパッチで傷口を塞いだ後、牛レザーを、ライフルの銃床があたる部分の肩ヨークのようにして、縫い付けています。

と、ここまで仕上げた段階で、山浦さんに、見ていただき、無事、OKを頂きました。その時、ミリタリージャケットなんかによくあるタグやワッペンなども格好いいよね、というお話が広がり、肩のヨーク部分に、サント薬局さんのURL 045310.comとか、お店のキャラクターである「サントのター坊」のイラストを入れる?なんていう話に発展。最終的に、「背中の上の方に、家紋がいいかも!」ということになり、追加のひと仕事!

(たー坊【左上】3年ほど前に制作したフライヤー用の図案より)

家紋は、折敷(おしき)に三つ目の釘抜きというもの。お手持ちの紋付きの着物の写真をいただいて、イラストレーターで図案を作成。

それをカッティングシートに出力して、名刺大の革に、ステンシルの要領で白く描き、縫い付けました。

白い塗料の下には、ゴールドを入れていますが、これは、次第に擦れて白が落ちてきた時に、ファスナーなどの金具と同じ、鈍い金色になるようにとの配慮からです。

と、細々仕事を続け、約1ヶ月のお時間を頂戴して、仕上がりました。さて、間もなく納品。喜んでいただけますように。

 

愛着のあるものは、お手入れ次第で、次の世代へバトンタッチできる。

今回は、レザーの品のお直しでしたが、無垢材の家具と同様に、お手入れ次第では、歴史を刻んでも、まだまだ使えるコンディションを保つことが出来ます。

いつの日か、ご依頼主のお子さんが、パパやママが大事にしていた品に袖を通し、家に置きというシーンが訪れることを願いますし、

そのためのお直しは、味といえる部分をできるだけ残し、かつ、もし、また直すことが必要になっても、次に修復を手がける人が手を出せるような直し方であるべきなのかもしれません。

中には、私では太刀打ちできないものもあるかもしれませんが、まずは、ご相談下さい。

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最後に、2016年10月 サント薬局さんの古く傷んでしまった葦簾の衝立をお直しという動画もご紹介して、おしまいに致します。