中国に家具を探しに行くと、茶や黒の家具も多くありますが、なんといっても赤い家具がとても多く目につきます。また、桶などの小さいものも、朱赤に塗られたものが非常に多くあります。
かつては、婚礼用にあつらえた家具や結納のような儀式で使われる蓋付きの桶などは、ほとんどが赤で塗られていたようです。
さて、ここからが本題。
先週お納めしたチェスト2点の塗り替えについて。
一つは、未塗装の状態で仕入れた当店のオリジナルチェスト。明スタイルのシンプルなチェストです。もうひとつは、ユーズドのチェスト。使い込まれ、塗膜は部分的に薄れたり、変色したものでした。
これらを同時期に、別々のお客様から、朱赤に塗りたいというご依頼を受け、塗装(塗り替え)をいたしました。
塗装前の状態
これを、下地を整えた上で、合成漆という塗料を使い塗装。(下塗りは黒でしてあります。)また完全に乾く前に、「古び粉」というものを使い、鎌倉彫りのように、古色を出した仕上げにしました。乾燥後、研磨剤で、磨くことまる1日。
赤の中に、下塗りの黒がうっすらと見え、また、古び粉により、全体のトーンも下がり、落ち着いた感じになりました。研ぎ出しは、鏡ほどにはピカピカにせず、天板においたものがぼんやりと映る位に磨いています。
こうして、完成した二つのチェスト。上の方は、個人のお客様のお玄関に。下のものは一日お一人様限定というお宿のエントランスにお納めしました。
時を同じくして、偶然にも赤い家具をお家・お店の入り口正面におかれるということで、なんとも不思議な気がしましたが、このような元気になれそうな赤い家具を置くことで、長く続く不景気、さらに一向に春めいてこないこのどんよりした天気を吹き飛ばせるような気がするものです。
ご家族やお客様にも、そんな依頼主様のこころが伝わることと思います。