漢代以前の家具
中国伝統家具といっても、その歴史は大変古く、周代(紀元前1046~紀元前256年)の周礼(周王朝の制度をまとめた経書)には、”王子の席は五重、諸侯は三重、大夫は二重”という記述があり、すでに床座ではなく、椅子に座るという記載があるそうです。
また、漆を使った彩色を施した家具、青銅製の家具も漢代(紀元前206~263年)以前のものが、近年、出土しています。
明代の家具
現在、一般的に知られるようなスタイルになったのは、宋の時代(960-1279年)や元の頃からとされていますが、
中国の家具が完成の域に達したのは明の時代(1368-1644年 日本では、室町~江戸時代)とされています。
明代には、封建統治が進み、道路の整備も進んだことから、人、資材、技術、様式などが、早く伝播していく時代。
漆、硬木(紅木)などの高級な材料、複雑な木組みの技術、バランスのよいプロポーションが確立されていきました。
ただし、今、多くの方が中国家具として思い浮かべるような黒や朱赤に金の絵付けの家具はまだ少なく、多くは、木目の美しさを活かした明るめの茶系の家具がほとんどでした。
これは、当時は今のように、電気による照明器具はなく、部屋も暗かったことから、明るめの色が好まれたということもあるようです。
清代の家具
明代に続く、満洲民族支配の清代(1644-1911年)には、明代の様式を引き継いではいるものの、装飾性が強くなっていきました。
雍正帝や乾隆帝などの栄華極まる時分を筆頭に骨、銀、玉、琺瑯などの象嵌を施したもの、吉祥文様の彫刻や描画を全体にあしらったもの、サイズも大きく、肉厚な躯体をしているなど、全てにおいて強烈ということば当てはまるような体裁をしています。
木の材質も、黒檀、紫檀、花梨、鉄力木という高級木材から、欅(けやき)、楠(くす)、楡(にれ)などの中級のものなど、多岐に及んでいますが、特に南方の黒檀、紫檀などを運ばせるだけのパワーが清朝にはあったということでしょう。
画面左は康熙帝が字を書いていると言われる画。右下は黒漆に五本指の金龍の描かれた宝座
当時の絵や現存する家具を見ても、装飾は少なめで、シンプルだが流れるようなラインを持っているのが大きな特徴です。
民国以降の中国家具
中華民国および現在の中華人民共和国における家具生産は、上述の明清時代の家具を基本的に踏襲しています。
ただし、素材は、楡の古材や、それよりもやや程度の落ちる糸杉、杉、樅(もみ)なども使われています。
また、木目を活かした茶系の家具は少なくなり、黒や朱赤のものなどが多くなっていきました。
また、清末からは、欧米列強の進出にともない、中国と西洋の折衷様式の家具などもあり、上海などを中心に今も存在します。
中国家具の時代による呼び方
明や清の時代の家具は、それぞれ明代家具や清代家具と呼びます。
これに対し、明式家具、清式家具という言葉もあります。この◯式は、いわば◯◯スタイルという意味であり、
必ずしも、その時代に作られたものという意味ではありません。