李朝家具とは
李朝家具・李朝工藝とは
李朝とは、李氏朝鮮の略で、正しくは朝鮮王朝と呼びます。この王朝は1392年から1910年まで、実に518年の長きに渡り続きました。
日本史と照らし合わせると、室町時代から明治時代までとなります。
この李王朝のもとでは、礼儀・道徳に重きを置く儒教思想を根拠に、役人登用試験「科挙」によって選ばれた高級官僚ヤンバン(両班)が、時代をリードしていきましたが、このヤンバンの文化こそが、李朝家具・李朝工藝の根底にあります。
勉学に勤しみ、贅沢・無駄を嫌う傾向は、彼らの使う家具や文房具などに色濃く反映されましたが、そのどれもが、優雅さを清廉を持ち合わせ、また至極簡潔であります。
文机や硯、水滴など、どれをとっても、さっぱりとしていて媚びるところのないものばかりです。
日本では、戦前より、多くの文人墨客が、李朝の品々の持つ魅力に強く惹かれ、コレクションをしてきましたが、中でも、柳宗悦・浅川巧・白州正子らは、コレクターとして有名で、今もそのコレクションを見ることができます。
柳らがその魅力を伝え始めてからおよそ100年の間に「李朝」という言葉は、単に王朝を名前を指す名詞から李朝時代の工藝品や家具を意味する言葉となり、また高級な骨董品の代名詞のようになっています。
実際、幾つかの戦争や、国の分断などを経るうち、李朝の家具や道具たちは、姿を消し、多くは日本をはじめとする諸外国に流出をしてしまいましたので、現存する李朝時代の品々は、稀少で高価になっています。
李朝家具の背景
「李朝家具」は、前述の官僚層「ヤンバン」が尊重した儒教精神のもと、簡潔で優雅な姿形として完成されましたが、
そればかりでなく、彼の地の生活習慣、自然環境なども家具の構造に大きな影響を与えました。
例えば、冬季の寒さが厳しい朝鮮半島では、かまどの熱を床下に通すオンドル(温床)と呼ばれる床暖房設備が普及していましたが、
床の熱により、家具が痛まぬようにという配慮、また居室に効率よく熱を伝えるため、床に直にものを置かないという配慮から、李朝家具には、「脚」がついているものが多くあります。
また、この脚は、まるでスキーの板のように、前後の脚に板が渡してありますが、これは紙を貼った床の上を滑らす際に、床を傷つけない(破かない)ためと言われています。
また、家具職人も居を定めていた者は少なく、ほとんどが旅職人であったといいます。職人は村から村へと旅をしながら、地元の主のもとに逗留し、要望にあったものを作ることが多かったようです。
大きな工作機械を運ぶ術がなかったことから、李朝家具は木を直角に合わせて金具で補強するなど、比較的簡単な組み立て方法が用いられています。
李朝家具に使われている金具は、主に鉄が使われ、次に真鍮や白銅なども使用されています。
ちなみにその金具は、朝鮮半島の地域ごとに、そのデザインや配置が異なり、時代考証や産地の特定にヒントを与えてくれます。
李朝家具の種類と用途
李朝家具は、儒教の精神を強く反映していると言われていますが、その中の一つとして家長を重んじるという精神も、家具の種類に影響を与えています。男女の居室がはっきりと分けられていた当時は、男性が使う家具と女性が使う家具も、大きく異なります。
男性の書斎(サランバン)で、勉学・書画をするのに適した家具として、書庫、文机、飾り棚などが使われ、女性の部屋(アンバン)では、衣類や寝具を納めた収納庫(バンダジ)などが置かれていました。
ここでは、過去に取り扱った品々の写真を参考に、李朝家具の代表的な種類と用途を解説いたします。
バンダジ またはパンダジ
李朝家具の中でも、もっとも数の多い種類と言われています。衣類や寝具の収納に使われていた「押入れ」的なもので、家具の正面の上半分が扉となっている。「半閉じ」という意味の名前もここからついた。
大きさも色々とあり、幅100㎝くらいの大型のものから、50㎝にも満たないもの。上部に棚板をつけたものなどバリエーションも幾つかある。李朝家具の中でも、頻繁に目にする機会があるのは、古い朝鮮の屋敷では、日本のような押入れがなかったため、収納庫として、様々な部屋で必要とされたためと言われています。
ハム
装飾品などを仕舞う箱など。 女性の居室アンバンで使われた。女性らしく螺鈿で装飾されたもの。
塗りが施されているものなどがある。
ジャン
アンバンで用いられた1層の箪笥。アンバンで使われていた家具は、座ったまま、使えるように低く出来ているものが多い。
只今、ジャンの画像はありません。
モリジャン
同じくアンバンで用いられた家具。 枕元に置かれるもの。
ノン
ジャンとは異なり、2または3層になっている。
ソバン
一人用の食膳として広く知られるソバン(小盤)は、李朝家具の代名詞的存在。
丸、多角形、スカラップ型のほか、地域によっては四角いもの(海州膳)などもある。
ソアン
「書案」と書くこの家具は、いわば文机。男性の書斎であるサランバンで使われた家具の代表格。
四方棚
男性の居室サランバン用の飾り棚。客人をもてなすこともあったサランバンでは、主人の趣味を表現する陶磁器などを飾るために、このような棚が使われてきた。
タグジャ
書棚。ソアンや四方棚同様、サランバン向けの家具。
書籍を置くためのもので、4隅の脚といった棚板だけの極めてシンプルなものが多い。
トンケ
銭函。金品の収納に使ったもの。金具は控えめで目立たぬが、分厚く堅牢な木材で出来ていることが多い。
ティジュ
お米や胡麻、その他の穀物などを貯蔵するための櫃(ひつ)。
ヤクジャン
薬箪笥。小さな引出が沢山ついた家具。漢方薬などの名前が刻まれていることもある。
日本での人気は非常に高く、李朝家具の中でも特に稀少になっている。

